米国との自由貿易協定(FTA)批准同意案が韓国国会で通過したことを受け、韓国政府は早期発効に向け関連法令の整備を急ぐ。しかし、反発する野党は強行採決の無効を主張して国会日程の中断を宣言し、反米感情と結びついたデモは激しさを増すばかり。盧武鉉(ノムヒョン)前政権時代から5年10カ月かかって通過した米韓FTAだが国民の視線は厳しさを増している。
●反米感情
米韓FTAは07年にいったん妥結した。対外投資の多い韓国にISD条項(投資企業が相手国政府を国際仲裁機関に訴えることができる規定)は有利なため、この時盛り込まれていたが、今はこれが代表的な反対理由となっている。米企業に提訴され韓国側が敗訴する事態が続出すれば国民への影響が大きいと認識されるようになったためだ。
反対派の急先鋒(せんぽう)に立つ野党幹部は、妥結当時は政権側にいて米韓FTAに賛成し「当時はよく分かっていなかった」と釈明している。
ただ、こうした政策転換は問題視されていない。それ以上に米国への警戒感が強いからだ。米自動車業界は昨年も韓国車の輸入増加に危機感を抱き、FTAに反対。これを受けた米政府が韓国自動車市場の非関税障壁などについて追加協議を要求するなど「ごり押し」のイメージが残った。
●農業生産減
影響が懸念されるのは専業化の進んだ農業やサービス分野だ。政府は米韓FTA発効後15年間で、農業生産額は果樹や畜産を中心に年平均8150億ウォン(550億円)減少すると予想する。
南西部・務安(ムアン)で夫と農場を経営する李貞玉(イジョンオク)さん(56)は「賛成とは言えないが、大きな流れは変えられない。ならば農家が力をつけるしかない」と話し、有機農法によるサツマイモの販売戦略や商品化に知恵を絞る。韓国ではチリとのFTAでブドウ農家への影響が懸念されたが、逆に味や質で国産の良さが見直される結果にもなった。
一方、知的財産権保護義務の強化により、価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)などの開発も遅れることになる。
●新成長動力
負の影響を補って余りあるのが輸出産業への効果だ。
韓国西部・平沢(ピョンテク)に本社を置く自動車部品大手「マンド」。今春、フォルクスワーゲンへの供給契約締結に成功するなど海外展開を進める。マンド社関係者は「輸入部品の関税8%も撤廃され国内の競争は激しくなるが、海外市場の方がずっと大きいのでわが社には有利に働く」と歓迎する。
韓国政府によると、7月1日に欧州連合(EU)とのFTAが発効してから4カ月の間に自動車輸出は前年同期比で91%増加。自動車部品も20%増えた。
世界不況の中で、韓国政府は「FTAは国の新成長動力だ」と自信を深める。米韓FTA発効後15年間で、自動車産業だけで対米輸出は年平均7億2200万ドル(555億円)の増加を見込む。
ソース(毎日新聞) http://mainichi.jp/select/biz/news/20111126ddm002030070000c.html
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●反米感情
米韓FTAは07年にいったん妥結した。対外投資の多い韓国にISD条項(投資企業が相手国政府を国際仲裁機関に訴えることができる規定)は有利なため、この時盛り込まれていたが、今はこれが代表的な反対理由となっている。米企業に提訴され韓国側が敗訴する事態が続出すれば国民への影響が大きいと認識されるようになったためだ。
反対派の急先鋒(せんぽう)に立つ野党幹部は、妥結当時は政権側にいて米韓FTAに賛成し「当時はよく分かっていなかった」と釈明している。
ただ、こうした政策転換は問題視されていない。それ以上に米国への警戒感が強いからだ。米自動車業界は昨年も韓国車の輸入増加に危機感を抱き、FTAに反対。これを受けた米政府が韓国自動車市場の非関税障壁などについて追加協議を要求するなど「ごり押し」のイメージが残った。
●農業生産減
影響が懸念されるのは専業化の進んだ農業やサービス分野だ。政府は米韓FTA発効後15年間で、農業生産額は果樹や畜産を中心に年平均8150億ウォン(550億円)減少すると予想する。
南西部・務安(ムアン)で夫と農場を経営する李貞玉(イジョンオク)さん(56)は「賛成とは言えないが、大きな流れは変えられない。ならば農家が力をつけるしかない」と話し、有機農法によるサツマイモの販売戦略や商品化に知恵を絞る。韓国ではチリとのFTAでブドウ農家への影響が懸念されたが、逆に味や質で国産の良さが見直される結果にもなった。
一方、知的財産権保護義務の強化により、価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)などの開発も遅れることになる。
●新成長動力
負の影響を補って余りあるのが輸出産業への効果だ。
韓国西部・平沢(ピョンテク)に本社を置く自動車部品大手「マンド」。今春、フォルクスワーゲンへの供給契約締結に成功するなど海外展開を進める。マンド社関係者は「輸入部品の関税8%も撤廃され国内の競争は激しくなるが、海外市場の方がずっと大きいのでわが社には有利に働く」と歓迎する。
韓国政府によると、7月1日に欧州連合(EU)とのFTAが発効してから4カ月の間に自動車輸出は前年同期比で91%増加。自動車部品も20%増えた。
世界不況の中で、韓国政府は「FTAは国の新成長動力だ」と自信を深める。米韓FTA発効後15年間で、自動車産業だけで対米輸出は年平均7億2200万ドル(555億円)の増加を見込む。
ソース(毎日新聞) http://mainichi.jp/select/biz/news/20111126ddm002030070000c.html